2013年5月15日水曜日

帰宅願望について考えてみる.



写真は記事の内容には直接関係ありませんが,寂しい感じの画像をセレクトしてみました(笑



皆さんは帰宅願望という言葉を聞いたことがおありだろうか?
聞いた事がある方は,なにかしら福祉に携わったことがある方ではないだろうか?

認知症グループホームにおいて帰宅願望とは,利用者様が"家に帰りたくなっちゃうこと"と捉えられている.この帰宅願望,驚く事に実は,自分の家に居ても帰宅願望が出ることがある.帰宅願望を帰宅(つまり自分の家に帰る)をしたい気持ちと捉えた場合,「自分の家にいても,帰宅願望が出ることがある.」という表現はおかしい.正しくは,「自分の家にいても,帰宅願望が出ることがある」ではなくて,「自分の家にいると,たまに外出願望がある」と表現するべきなような気がする.まぁ,帰宅願望という言葉は後から,認知症ケアを行う人達が作った言葉なので,そんな間違いがあることがあると思う.

 さて本題に入ろうと思います.今,目の前に帰宅願望がある利用者様がいらっしゃったとします.さてあなたはどうしますか?

1.帰宅願望から気持ちをそらすために話を変える.
2.とりあえず,一緒に出てみる.
3.xxxxxだから家には帰れませんよ.と説得する.

どれが絶対正しいとかはないと思います.事業所によって正しいと考えられている回答が違うと思いますし,上記の3つ以外にもたくさん対応方法があると思います.
 しかし,グループホームきよすでは,2番の,「とりあえず,一緒に出てみる」を実行することにしています.それはなぜか?

帰宅願望が出た利用者様が家に帰りたいんです.家に帰りたい理由はたくさんあると思いますが,今までの認知症ケアの経験からすると(経験主義になりすぎるのも危険だと思いますが),今居る場所が居心地が悪いから帰宅願望が出ているんだと考えています.

よく帰宅願望について言われることは,認知症ケアの現場において,夕方に帰宅願望が出る事が多いというのは,認知症ケアをしている介護スタッフの中ではなんとなく感じ取れることかと思います.では,何故夕方に帰宅願望が出易いのか?それは,「普通の人の暮らし(サラリーマンや主婦など)をしていると,夕方になると家に帰るのが普通だから」という分析をする人達が多い思います.

しかし!それは間違いだと思います.

今居る場所が居心地が悪い

その場所から離れたいと感じる

家に帰りたい,

となるんだと思います.居心地が悪いというのは,やることがなくボーッとしていたり,他の利用者様との人間関係もあるでしょうし,夕方になるとサザエさん症候群に毎日なっているのかもしれません.はたまた,知らない場所にいきなり連れて来られたと思っているかもしれません.いろいろな原因があると思います.そうすると自ずと,どういうケアをするべきか見えてくるように思います.

今までは,ただ単に帰宅願望が出たら,ドアに張り付いている利用者様を見てみぬふりをしたり,何度も帰宅願望を訴えかけてくる利用者様に対して,説得したり,話をそらしたりするという対応をしていたかもしれません.しかし,利用者様が訴えかけてきていることは違うんです.今,自分がいる場所の居心地が悪いということを訴えかけているんです.つまり,帰宅願望が出る利用者様がいる事業所は,その利用者様にとってその帰宅願望が出る時は,居心地が悪いんです.この事実から職員が目を逸らすとケアが良い方向には進みません.

介護スタッフからすると,「自分たちがいろいろ工夫して環境を整えたり,いろいろ身体的なケアなどを献身的にさせていただいている(人によっては,してあげている)」という気持ちが有るため,自分たちが作っている空間が本人様にとって居心地が悪いところだ!ということを受け入れるのは,自己否定につながるので,なかなか受け入れることができませんが,これが事実なんです.

これを受け入れた上で,どうすればいいかと言うと,居心地の悪いところからとりあえず離れれば良いんです.認知症でない方でも,ひとんど知っている人のいないパーティーに行ったら,早く帰りたくなるでしょう.それと一緒です.外に出たりして,気分転換を測るんです.で,戻って来たらまた帰宅願望が入るかもしれません.そしたら、又出て行けば良いんです.これを繰り返すことによって,本人様はだんだんとグループホームに馴染んできます.(1週間や2週間じゃ意味がありません.グループホームきよすの経験上一番長かったのは,1年かかりました).

これを帰宅願望がある利用者様一人一人に行っていくんです.多い事業所だと,帰宅願望に入る利用者様が2人,3人が同時に入るかもしれません.そうしたら,その時に一番必要だと思われる利用者様のケアに入れば良いのです.それ以外の食事や洗濯なんてものは,いつでも出来ます.その時に利用者様に付き添わずに,洗濯や食事,清掃なんてしてたら,その介護スタッフは必要ありません.必要な時に必要な分だけ,ケアが介入すればいいんです.

ここまでの話で,大切なのは,各利用者様を平等にケアするなんてのは無理だということです.自立支援という視点で,考えた場合,各利用者様によって,ケアの介入度が異なってきます.一人で洗剤入れて,電源入れて,スタートボタン押して.と全て一人でできる人と,声かけがないと出来ない方もいらっしゃいます.ここで差は生まれてくるんです.
利用者様一人一人平等にケアしましょうという叫ぶ人は,ここの疑問に答えていただきたい.

とここまで長々と話しましたが,僕の考えが正しいとは限りません.あしからず.

さて長文になってしまいまして,最後まで読んでいただいている方がどれだけいるかわかりませんが,感想や意見,反論がありましたら,コメント欄でお寄せください.いろんな意見が聞いてみたいです.

グループホームきよす マネージャー 平林拓人

グループホームきよす
愛知県清須市西田中本城46番地
052-400-3004
http://www.activelifekiyosu.com

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